RUN&GUN
「無愛想だったけど、顔立ちは可愛かったのに。あ、そっか。そのまま育っちゃったのね」

やっぱりこの人が、俺を育てたんだよなぁ、と思いながら、与一はまじまじと藍を見た。
でもやはり、間近で見ても、自分より年上には見えない。

「やん。よいっちゃんたら、そんなに見つめて」

藍が両手で己の頬を包んで、横を向く。
ちらりと横目で見る潤んだ瞳も、桜色の頬も、最高に絵になる。

「心の中にいる女より、目の前のあたしのほうが魅力的だって気づいたのかしら」

意味ありげに与一の胸を指先でつつきながら、藍が再び顔を近づける。

「昔別れた村の奴らはどうしているかって、思っただけですよ」

「あら。よいっちゃんと売られてきたのは、あのお姉さんだけじゃなかったのね」

藍が小首を傾げて言った。

そういえば、藍が現れたときには、すでにお三津しかいなかった。
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