RUN&GUN
「よ、よせ・・・・・・。下駄屋にあるって情報は、主から依頼された時点で聞かされてたんだよっ。主は貿易商だし、珍しい舶来モンとかで商売してるから、顔は広い。その中の誰かから聞いたんだろうよっ」

やけくそ気味に叫ぶ男に、与一は呆れた。
お庭番を名乗るくせに、喋りすぎではないのか。
もっともそのほうが、こちらも助かるのだが。

「だから、その主って誰よ」

藍が、ほれほれ、とばかりに小太刀を揺らす。

「そ、それは・・・・・・」

再び男の瞳が泳ぐ。
主の名前を出さないだけの気概はあるのか。
しかしこの調子では、口を割るのも時間の問題だ。

「あら、言いたくない? じゃ、さよなら」

ぐい、と藍が、小太刀に体重をかけようとするのを目の端で捕らえた男が息を呑み、必死に叫んだ。

「ひ、東のお方付きの・・・・・・」

「!」

与一と藍が、素早く男から飛び退いた瞬間、男の喉に、飛んできた苦無が突き刺さった。

与一は一瞬だけ男に視線を落とし、小太刀を引き抜くと、藍を引き寄せて走り出した。
< 238 / 407 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop