RUN&GUN
---よいっちゃんたら、衆道者とそんなに見つめ合っちゃ駄目だって。もう、自分の魅力に気づいてないから、たちが悪いわ---

藍は与一の背後で、少しはらはらしながら、ちらちらと成り行きを見守った。

「・・・・・・あんたぁ、お蓉さんの許嫁か」

抑揚のない声で言い、与一は藍の手を取って立ち上がった。
そのまま風之介の横をすり抜けて、廊下に出る。

「振られたようだがね。・・・・・・お前さんは、逃げるのか」

すれ違いざま、風之介が口角を上げて言った。
終始落ち着いた雰囲気だが、まるで全てを見透かしているような気をまとっている。
今の言葉も、単に『この場から逃げる』という意味にも、『御珠を狙う者同士の鉢合わせから逃げる』という意味にも聞こえる。

「ああ。別に俺は、お蓉さんの想い人じゃない。あんたじゃないのも、確かだがね。あんただって、お蓉さんが好きなわけでは、ないんじゃないのか?」

おそらく風之介がお蓉に近づく目的は、お蓉を通じて下駄屋に渡りを付け、御珠を手に入れるという、与一らと同じ、御珠への最短距離のためだろう。

与一は冷めた目を風之介に向けた。
与一の言葉に怒るでもなく、風之介は涼やかな笑みを湛えたまま、少しだけ目を細めた。

「色恋のごたごたに巻き込まれんのぁ、御免だ」

くるりと風之介に背を向けると、与一は藍を連れて、さっさと廊下を歩いていった。
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