RUN&GUN
「お前のような、ふざけた輩は、本当吠え面かかせてやりたくなるな!」

ひらひら舞うように脇差しを繰り出す竜胆丸に、イラッときた与一は、言うなり脇差しを弾きざま、ぐんと前へ出て距離を詰める。
間髪入れずに、間近に迫った竜胆丸の首筋目掛けて、小太刀を叩き込もうとした。

が、小太刀は竜胆丸の首のすぐ横で、脇差しに受け止められた。
距離を詰める前に、かなり大きく弾いたのに、驚くべき早業だ。

与一はそのまま、反撃する暇を与えることなく、小太刀を振るった。
だが、ことごとく受け止められてしまう。

竜胆丸の脇差しは、一尺三寸ほど(約四十センチ)。
中脇差しと呼ばれるもので、二尺(六十センチ)の小太刀より小さい分、小回りが利く。
もちろん、ただそれだけの理由でなく、使い手が相当な手練れであることも、大きな理由だが。

「僕の防御は、完璧だぜ。お前の太刀など、全て防ぎきれるわ」

竜胆丸が、脇差しの向こうから笑う。
与一の攻撃も、とても素人業ではない速さなのだが、それを全て受けてもなお、竜胆丸には余裕がある。

「このままお前が疲れるのを待ってもいいが・・・・・・。それじゃ、つまらない」

にやりと笑うと、竜胆丸は与一の小太刀を受けると同時に、横に流した。
今までただ、小太刀と脇差しが一瞬触れ合うだけだったので、力の均衡が崩れ、与一の小太刀が少しだけ持って行かれる。
その隙に、竜胆丸は、さっと脇差しを戻しつつ、与一の胸を斬り裂いた。
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