静かなる蒼き雷鳴(仮)
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(キムンよ、本当に良いのか? 他に道もあるのだぞ・・・・・・)
 侍大将認定試験に挑む少し前、立会人である父の言葉が、耳に残っていた。その眼差しは、これから先に俺が目指す茨の道を察するかのように、深い哀愁に満ちていた。
 やってやる・・・・・・ 俺は貴方の息子だ。親父を尊敬している。だから・・・・・・俺は、この道を選んだのだ。
 「行きます! お願いします」
この国では珍しい黒髪の青年は、力強く門の前に立ちふさがる兵士に声を掛けた。
 白く長い顎鬚を蓄えた、がっしりとした老兵がギロリと目を青年に向け、ゆっくりと木製の龍や異国の神々が彫刻された扉を開いた。
 それと同時に、法螺貝という異国の笛の音が、高らかと鳴り響く。
 風変わりな鎧に身を包んだ老兵が、先に扉の先に進み、鋭いまなざしで上方を見据えて、胸を大きく張って叫んだ。
 「ただ今より、侍大将への承認を試す試合を開催いたし申す。 推薦人、蒼家頭領。クンネ・カント・カムイ殿。挑戦者、蒼家蒼流小太刀剣術、クンネ・キムン殿」
 そう言い終ると、反転してキムンの正面を向いて軽く頭を下げた。
 「クンネ・キムン殿、入られい。 準備をなされよ」
それを聞いて、キムンは老兵へ頭を下げ、中へ入った。
 それを合図のように、直径が3mもあろうかという大太鼓の音が鳴り響き、ガラス戸がビリビリと反響する。
通された部屋は、10m4方程の小部屋だった。
その中に、大小様々な武器と防具が陳列している。
 それらに目をやってから、キムンは老兵をチラッと見た。
 「好きな物を、好きなだけ身に着けてよい。準備が終わったら、申してくだされ」
 キムンはそれを聞き、会釈だけ返して陳列された道具に目を這わせた。
 (色々あるな・・・・・・さて、どうしたものか。どれを選ぶかは、試験官にもよるのだが・・・・・・。間違いなく、あの女だろう)
陳列された棚と机を2度3度と往復し、考えを巡らす。
 


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