出会い・白輝伝
屋敷跡
時が流れ町並みが、慌ただしい
ビル街に姿を変えるなか。

その場所だけは、時を忘れ全て
の者を拒絶しひっそり
と静まり返っていた。

樹木が生い茂り朽ち果てた
屋敷が、残るその土地に
新たな時の流れが動き出したの
は夏の終わりだった。

二百年に渡る血筋最後の
老人が、死に彼の唯一
の財産である土地・五千坪を
貰い受けた遠縁の者達は、
都内の一等地にもかかわらず、
急ぎ不動産業者に売り渡した。

地盤の悪い不良物件といぶかる
業者に、曖昧な態度で応える
縁者達…不審を感じたものの
格安の売値と経済的に維持
出来ないと言う相手の返答に
業者は、買い付けの
契約を交わした。

秋風が吹き始める頃には、
大型の土木機械が入り
ビルを建てるための地盤
作りが始まった。

その日は朝から掘削機の調子
が悪く、工事は夕方まで続い
ていた。ライトの明かり・
工事現場が作り出す
騒音の中・男は携帯電話に
向かい声を張り上げていた

「だから・・出たんですよ、
社跡にそうあの言い伝えですよ。
いまさら祟りなど、
ないとは言っても気持ちの
良いもんじゃないし
現に埋めた物が、出てはね」

「監督〜遺跡や貝塚だと
まずいんで、手堀に変える
そうです。掘り出すから
…立ち会ってくれって、
言っています」

若い作業員が男を
呼びにきた。

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