魔女の報酬
(3)可愛い魔女
「それなら、こういうのはどう? あなたのお后の座を私にくれるというのは? 悪い条件じゃないでしょう?」

 ロランツはメディアの弁に戸惑った。

 会ってまだ間もないのに、彼女をひどく気に入ってしまっている自分に気づかせられたのだった。メディアの申し出がひどく幸運なものに思えてならない。どこぞの見たことすらない姫君をおしつけられて結婚をするよりも、メディアのような突拍子もない女の子が相手のほうが、よほど退屈しない人生を送れるだろう。しかも、面倒なプロポーズの手順をすっ飛ばしてしまえる。

(参ったな。僕はいったい何をしに、ここに来たんだ?)

 ドラゴン退治の助力を求めにきたはずである。
 結婚相手を探しに来たわけではないはずである。
 ロランツの戸惑う様子を勝手に誤解したメディアは得意気な表情を見せた。

「別にいいのよ。その気がないんならわたしだって、わざわざドラゴンなんて物騒なものの相手なんかしたくないんだから」

「いや」

 そう、はじめて彼女を見た時、かわいいと思った。
 惨澹たる有り様で途方にくれて立ちすくんでいた少女。その姿にドラゴンの襲撃に緊張しきっていた心が緩み、思いもかけず笑い出しもした。それに彼女は違っていた。宮廷のきれいだが無個性な女たちとは。

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