ラブレター 〜初恋〜
数日後ハルは退院した。
いつものように降りていくとそこには二人分の朝食の準備がしてあった。ハルの両親はハルの小さい頃はとても仲が良かった。しかし、ハルが中学に上がる頃から父は仕事を理由に家をあけることが多くなった…。1ヶ月帰ってこないなどもう当たり前のようになっていた…。最後に会話をしたのはいつだったか忘れてしまうほどだった。
母も昔とは変わってしまい、お酒を毎日飲むようになってしまった。それまでアルコールは全く飲んでいなかったのに…。それから、家に一人でいたくないのかスナックで働くようになっていた。母の顔にはもう昔のような笑顔はなかった。ハルは一人で夜ご飯を食べていた。テーブルの上にはいつも壱万円が置かれていた。
ハルの顔にも笑顔は消えていた…。学校でもハルは一人でいることが多かった…。毎日ただただ学校と家の往復だった…。ハルは自分の存在が疎ましくて仕方がなかった…。命など惜しくないとさえも考えていた……。自分の存在の意味がわからないでいた…。私は何のために生きているのか…。私を必要としてくれる人はいるのだろうかと………。
そんなことを考えながら歩いていた。そんな日だった。
目の前で急に子供が道路へと飛び出そうとしていた。ハルの体はその子に引き寄せられるかのように自然と向っていた。死にたいから…もうどうなってもいいから…そんな思いではなく、助けたい。ただその一心だった。それはハルの素直な気持ちだった。
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