あーちゃん~最初で最後のニューハーフ~
 現場に着くと懐かしい顔ぶれが何人もいた。

1人の女性が私に手を大きく振る。

女性は、皆から離れ、橋へ移動する。

「・・・ここよ、ここ。」

近付いた私に女性が教えてくれる。

「みーちゃんはここから飛び下りたんだって。」

私は、橋の欄干から身を乗り出して下を流れる川を見つめる。

どんな気持ちでみーちゃんは飛んだのだろう。

私は、向日葵の花束を橋の上から投げた。

「さーちゃんは?行った?」

さーちゃんが首を横に振った。

「あーちゃんも?」

私は、欄干に手を乗せて苦笑いをする。

「喪服もね、全部を用意したんだけど無理だった・・・。」

「うん・・・。」

「みーちゃんはなんでピーターパンになっちゃったんだろうね。」

「分からない。だって、昔から自分のこと話さないじゃん、みーちゃんって。」

「そうだった、そうだった。」

私とさーちゃんはケラケラ笑う。
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