コトン、コトン。
「話を聞いてくれて、有難うございました。
すっきりしました。」

彼女は店を出るとこう言いました。


「何かあったら、話くらいいつでも聞けるよ。
これ、名刺…良かったら…。」


僕は彼女に名刺を渡しながら、ふと思って聞きました。



「そういえば、コウちゃんって本名?」


彼女はコウという名前で音楽をやっていました。


「いえ…、本名は幸せって書いてサチです。

でもサチだとちょっと地味でしょ。だからコウにしたんです。」


さち…。

彼女の本名を知った夜。
華やかな彼女の意外と親しみやすいその名前に、ますます魅力を感じてしまいました。
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