愛 理~airi~
“隠しても分かる事だし、オマエは後で知ったら怒るだろ?”
そう言って菊池が教えてくれたのは、同期入社で気の置けない仲間である証だが。
あと少しで命が…、ソレを告げられた時にゾッと全身を悪寒が走ったのも本当だ。
刺された事で意識を絶っていた間に、直面していた死との隣り合わせが恐ろしくなる。
もしも異国で、彼女たちの知らない所で、自分がひとり命を落としていたら…?
「なぁ…この部屋、何か」
手続きなどは会社で行ってくれたのか、豪華な個室ベッドな事に今さら気づくと。
「ああー…場所が場所だけに、内々で処理する事も出来なくてな…。
少々の騒ぎにはなっているが、じきに収まるだろ。天下のGELが黙っちゃいない。
まっ、すべて会社の負担だし。お前は心配しないで身体を休めろ」
またしても菊池は苦笑したあと、言い淀みながら問い掛けにハッキリ答えてくれた。
「…悪い」
「だからー、オマエは悪くないっての!」
いつになく詫びる俺を不憫そうにしながらも、気づかってムリに笑ってくれる。