愛 理~airi~


ハッとしてすぐに表情を戻したものの、しまったという顔つきで一歩下がったヤツ。



「そりゃ痛いよな?悪い…」


「い、いや…」


目が覚めて捉えた見知った人物とは、日本支社から本社へ転勤した菊池(キクチ)。



ハハ…と苦笑し合ったものの、どことなく流れる空気は気まずさを含んでいるのは。



刺された被害者である俺も、刺した加害者であるメアリーも、会社の同僚だから…――




「でも、本当に良かったよ…。

刺されたって聞いて…、気が気がじゃなかったよ」


「――申し訳ない…」


「お前が謝る必要が一体ドコにあるんだよ?」


医師と看護師はバイタルチェック等を素早く済ませると、そのまま部屋を退出した。



麻酔が切れてくると痛み出すという事だったが、すでにズキズキ痛んで仕方ない。



菊池の話では医師の診断よると全治1ヶ月で、此処での入院期間は3週間になるそう。



果物ナイフ程度の小さな刃だと思っていたが、どうやら鋭利なモノだったらしく。



もし刺し口が少しでもズレていれば…、動脈を傷つけて命も危ぶいところだった。



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