ふわふわのいた町
れたりするといけないから。」
少年は近くのバス停のベンチを指差した。
ショックってなに?一体どんな話、する気?
悠々の顔色をみて少年は笑みを浮かべながら言った。
「大丈夫だって。そんなに怖がらなくても。こけたって本当に怪我はしないから。」
おいっ、怖がらせたのはあんたや。
悠々は心の中でツッコミをいれてみた。
馬鹿みたい、あたし。
少年はベンチに向かってすたすたと歩き始める。でも本当に固まったように足が動かないのだ。どうしてもこの場所から動いてはいけない気がする。少年は戻ってくると、いきなり悠々の手を握った。思わず手を引こうとしたが、ぐいっと引っ張られると意外に簡単に歩きだせた。ベンチには先客がいた。白髪の老人で、なんだかチョコンとした感じで腰掛けている。少年は悠々と手をつないだまま、老人に会釈した。
「おじいさん、こんにちは。ちょっと、お邪魔します。」
老人は顔をあげると二人を見た。挨拶と了解をかねた微笑を少しだけみせた。
どこかで会ったかな。このおじいさん。
悠々は老人の笑顔に見覚えがあるような気がしたが、すぐには思い出せなかった。老人はすっと体を動かして二人分の席を空けてくれた。少年はもう一度、会釈してから悠々の手を引っ張って座らせた。少年はまた、ぐっと悠に自分の顔を近づけた。少年の目は男の子にしてはまつげが長く女の子みたいな印象がある。二重まぶたの涼しい目をしている。自分の一重まぶたに不満一杯の悠々はそれだけでも、少年に敵意のようなものを感じる。
ちょっとぉ、顔近すぎ。あんた、人との距離感、おかしくない?
「手、離して。もう大丈夫だから。」
ちっとも大丈夫ではなかったが無理して言った。この後、どんな話を少年がするのか、やっぱり怖かった。でも悠々は手を引いて少年から体を少しでも離れようとした。
「あっ、ごめん。」
少年は慌てて手を離すと頬を少し赤くした。
< 3 / 14 >

この作品をシェア

pagetop