BELLADONNA -沈静の劇薬-
一国の主が平民の前に用もなしに顔を出さない。
普通なら。
しかし、亡王は民を思いよく巡回を行っていた。
決して一人ではないけれど、馬車から降りては、麦の成長はどうだの、子どもは大きくなったかなどと話していた。
だから亡王の顔は少しばかり記憶の断片に残っていた。
『知っていま…す。』
「なら、この模様は?」
ジーノは着ている物の胸の部分を差して尋ねた。
見慣れた飾り…そういえば、この部屋に入る廊下にもあったし、取っ手にも装飾されていた。