べガとアルタイルの軌跡
≪2年前≫
8月5日。

去年の残像が胸をよぎり、今年も仙台七夕花火祭を見に来た。



今年は1人で来た。

場所は確保していない。

橋の上を行き来する。



みんな、花火に夢中なのに、私だけ違う。

バカみたい。



私と君が再会したのだって、十分、奇跡だったよね?



ずっと名前も呼ぶ事が出来ないうちに、私は槙原くんの事を『君』と、心の中で呼ぶようになっていた。



『奇跡』って言うのは、そんなしょっちゅうある訳無い。

小2の時に転校して行った君と、大学に入って偶然同じバイト先で再会した。

それだけでも、かなりの『奇跡』な筈なのに……それ以上の、何を望むの?



君のおかげで、元カレの事も吹っ切れた。

君のおかげで、バイトも楽しかった。



ありがとう、私と出会ってくれて。



ありがとう。



遥か遠い東京の空の下。

今は別の人と新しい生活をしている君に、届かない感謝の気持ちを心の中で呟いた。


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