センセイ


「センセイ、この前のこと……。あれからどうしたんですか」

「この前?……あぁ、別にどうもしないよ。そんな事実はありませんよって言ったら、湯本先生も「そうですよねー」って納得してたし。
でも、信用されてて嬉しくも思うけど、そんなことするような奴に見えないってのは、男としてはどうなのかなって感じでもあるよなぁ、ハハハ」

「……」



私が硬い表情のまま質問したって、センセイはそう言って、また自分をちゃかすように苦笑いするんだ。



もう、どうしていいかわからなくて。

これ以上この気持ちを、どこに持っていけばいいかわからなくて。

私は黙ったままに、白衣のボタンをひとつずつ外していった。



だってこうすれば、もっともっとこの問題が大きくなって

センセイは私を、忘れられなくなるはずだから。




< 34 / 50 >

この作品をシェア

pagetop