センセイ
side 白鳥悠輔
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生徒たちに見送られてから、どれくらいの時間が経っただろう。
窓の外には、今まで見てきた景色とは違うものが、視界の際を流れて行く。
わずかに入り込んでくる涼しい風。
でも、夏の暑さは嫌いじゃなかった。
強い陽射しに照らされる廊下も。
いろんな出来事を見せてくれた、静かな日陰の物理室も。
教師として特別を持たないことと、一人の人間として感じてしまう特別があること。
あの学校に思い残したことがないかと言えば、そんなことはないけど。
今答えを出すべきじゃないことは、確実にあるから。
誤魔化し続けた想いの行方。
隠し続けた本心。
そして心惹かれた不安げな表情や、胸躍らされた嬉しい想いを表す仕草も。
すべては過ぎ去った、過去の思い出に。
そしていつかまたくる
出逢いのために。
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fin
