???
「おい!お前ら、いつまで無駄話してるんだ!仕事始まるぞ。」

 不意に二人の背後から怒鳴り声が響いた。

 慌て二人は組んでいた肩を外し、背後を振り返る。

「お…お早うございます。鈍平(どんぺい)さん。」

「お早うございます。さあ仕事しよう。」

 それは二人の上司で口笛の名手、鈍平だった。
「お早よう。」

 ピー。

 鈍平は短い挨拶を交わすと、口笛を吹きながら去っていった。

「あーびっくりした。仕方ねーな、仕事すっか。まあヨッタ、楽しみにしてな、俺様がビックになっても友達でいてやっからさ。」


「お早よう、貴ボン、ヨッタ。朝から楽しそうね。」

 不意に二人の背後から声がする。二人が振り返る。


 二人に挨拶してきた、長い黒髪の女。この会社のアイドル的存在、京子だった。


「おはよー。」
 挨拶を返す貴ボン。


「おう、お早よう京子。聞いてくれよ、こいつ朝っぱらから、馬鹿な事言ってるんだぜ。」
 言ってヨッタも挨拶を返す。

「あのよ京子、“たまちゃん”見たくねえ?俺のアパートにいんだよ。会社帰り見にこいよ。」

「行かねー方がいいぜ。貴ボン、何考えてるか分かんねーから。」
 ヨッタは二人の会話に割って入る。

「だよねー貴ボン危ないから。」
 京子が笑う。

「そんな事ないぞ。ヨッタ、変な事言うなよ。」
 貴ボンは軽くヨッタを小突いた。

「そんな事より、仕事しないと、また怒られるよ。」
 京子は、貴ボンを軽くあしらった。

「おっと忘れてた。仕事すっか、京子またな。」
 そう言うと貴ボンは、自分の持ち場へ足を向けた。

 ヨッタと京子は、しばらくその背中を眺めていた。



 普段通りの朝の風景だった。


 だが、この時ヨッタ・貴ボン・京子の三人は気付く事はなかった。




 …これから巻き込まれる大事件の事を…
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