???
「どうしょう、どうしょう!これと、これと…」

 自分のアパートに戻った貴ボンは部屋中を物色していた。

「これは、俺の宝物なんだけど…仕方無い!」
 そして紙袋いっぱいに詰め込み、部屋を飛び出した。


「急がなきゃ!」
やがて貴ボンのケンメリは何出弥製作所に向かって疾駆し始めた。




「あそこの人垣だな。」
 車から降りたヨッタの眼前に人垣があった。ヨッタはそこに向かって歩きだす。

「や…止めてくれよ!ぎゃあーー!!」
 そこではオデッサのリーダーが、ジークレに捕らえられていた。

「キャキャ。」
 ペキッ。ジークレはリーダーの指を一本ずつ折っている。

「ガ……」
 リーダーが“落ちた”。それでもジークレの遊戯(ゆうぎ)は終わらない!

「…誰か何とかしろよ。」

「馬鹿言うなよ!拳銃も効かねえんだぜ。」

 仲間達は何も出来ずに呆然とその光景を眺める。


「お…押すなよ。」
 その仲間達をかき分けてヨッタがジークレの元に歩み寄った。

「ダレダ?」
 ジークレの視線がヨッタに注(そそ)がれた。

「…あのスーパーリーゼント!まさか…」
 オデッサの一員が呟く。

「た…貴ボンだ!」
 別の男が叫んだ。

「本当だ。あの頭は“本牧の魔王”貴ボンさんだ!」

「あの人が伝説の貴ボンさんか!」

「やっちゃって下さい!貴ボン。」

 周りから拍手喝采があがる。

「だれが…貴ボンだ!」
 堪らずヨッタが叫んだ。

「え?…タコ顔じゃ無え!貴ボンじゃ無え!」
 一人の男が愕然(がくぜん)と言い放つ。

「貴ボンじゃ無え!」

「貴ボンさんじゃ無え?嘘!」

「あー終わりだ。貴ボンじゃ無え!」

 周りから再び絶望の叫びがあがった。
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