ワンラブ~犬系男子とツンデレ女子~



「え…き、稀衣ちゃ…」



慌てて机から飛び下りたオレに、稀衣ちゃんは何も言わないまま抱き着いた。



「っ?!」



いきなりで少しよろけたけれど、しっかり体勢を立て直して彼女を受け止める。



「…稀衣ちゃん?」



オレのブレザーを握りしめるこぶしが、微かに震えている。



こんなに焦って何かに怯えてる。



こんな稀衣ちゃんは初めてで、ただ事ではない予感がオレの脳裏をよぎる。



「どうしたの?」



なるべく優しく、稀衣ちゃんに尋ねる。



オレの声にハッとしたように顔を上げ、少しだけ離れる。



「…ごめん」

「んーん、大丈夫?」

「うん…大丈夫」



稀衣ちゃんは俯いたまま、唇を噛み締めていた。



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