ワンラブ~犬系男子とツンデレ女子~



「…じゃ、あたし帰るから」



それだけ言ってとっとと歩き出すあたしを、佐倉は引き止めた。



グッと腕を掴んで。



「…なに?」



平然を装うのに必死なんだから、早く帰らせてよ。



アンタには、全部見透かされそうで怖いんだから。



「泣いた?」



唐突すぎる佐倉の質問に、思わず黙り込んでしまった。



泣いては、いない。



けどいつ泣いていても、おかしくなかった。



「なんで泣くの」

「それに、マコもいないじゃん」

「そ、それは…っ」



そうなんだけど。



あたしだって、どうしていいのか分からなかった。



ほかに何て言えばよかったのか。



帰ってこない方がよかったのか。



そんなの、考えても考えても分かんない。



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