アリスズc

 ハレとホックスが神殿に行ってしまうと、リリューのすることはなくなった。

 宿舎に行くか、適当に歩くか。

 少なくとも、明日の真昼まで、彼には大きな暇が与えられたのだ。

 そんな風に考えながらも、神殿前でぼんやりしていると。

 本殿から、出てくる人間が見えた。

 リリューは。

 ゆっくりと、自分の目を大きく見開いたのだ。

 ひとつずつが。

 その人間のひとつずつが、彼を驚かせていったのだから。

 しっかりとした身体つき。

 大きな手足。

 腰に下げた、日本刀。

 褐色の肌に、金褐色の瞳。

 そして、左目の下のふたつのほくろ。

 悠然と、こちらを見ながら近づいてくるその男を──自分は、よく知っているはずだった。

 母か。

 腰の日本刀の理由には、すぐに思い当たった。

 母が、彼の成人の儀式に合わせて、神殿に送っておいたのだろう。

「久しぶりだな、リリュールーセンタス」

 無事を喜ぶ目ではない。

 彼らが、ここに到着して当たり前という目。

 この旅路の途中で、残っていた子供っぽさは、どこかに捨て去ってしまったようだ。

 リリューは、ハレの成長を惜しいと思った。

 彼は、よい太陽になるだろうと。

 しかし。

 テルもまた、熱い血潮を感じる雄々しい男になっていたのだ。

 ハレとは違う意味で、彼もまた太陽に相応しい。

 勿体ないことだ。

 まったく同じ年で、まったく違う性質の、太陽に相応しい者が二人もいる。

 だが。

 太陽の椅子は、ただひとつ。

 彼らが、椅子を争うことはない。

 少なくとも、ハレは──そこに座る気はないのだから。
< 215 / 580 >

この作品をシェア

pagetop