アリスズc

 晩餐が、始まったようだ。

 リリューは、相変わらず晩餐に呼ばれることはない。

 それよりも。

 彼は裏庭に出て、月の昇る空を見上げた。

 ほぼ満月に近い形。

 明日が、19日なのだ。

 中季地帯の肌寒い夜の空気を、リリューはゆっくりと割って歩く。

 何かを、期待しているのだろうか。

 自分のことが、よく分からなかった。

 ただ。

 いるのではないかと。

 この夜に、またいるのではないかと──どこかで思ってしまったのだ。

 そして、たどりついた。

『そこ』へ。

 人の気配はない。

 前に来た時、そこに座っていた人はいなかった。

 しばらく、その空間を見つめた後。

 リリューは、部屋に戻ろうとした。

 その時。

 奥の方の建物を回って。

 誰かが駆けてくる。

 少し重たい足音。

 月夜に浮かび上がる、ふっくらとした影絵。

「あ、いた!」

 彼女にとって、自分の影絵はどう映っているのだろうか。

 大きい男というだけならば、他にも何人もいるはずだ。

 腰の刀のおかげだろうか。

「よかった…いてくれて」

 一生懸命走ってきたのだろう。

 声は、ぜいぜいと息切れをして、そしてしばらくしゃべれないようだった。

「ありがとう…坊ちゃんが連れて行かれたから、私はここをやめずにすんだの」

 全身から、弾けるような感謝の言葉。

 ああ。

 夕日とリクに連れ去られた、この家のドラ息子のことを思い出した。

 そうか。

 彼がいなくなり、そして少しでもマシになって帰ってくれば、彼女の心は穏やかになるのだ。

「よかったな…」

 自然と、言葉が出た。
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