アリスズc
∠
 テルは、毎夜オリフレアの部屋に通った。

「何しに来たの!?」

 毎回毎回飽きもせず、同じ言葉が言えるものだ。

 彼女は、少しずつ元のオリフレアに戻りつつある。

 だが、その大半はポーズにすぎなかった。

 一生懸命虚勢という名の、新しい柱を建てようとするのだ。

 テルに、毎回それをブチ壊されるだけだが。

「よぉ…幸せなオリフレアリックシズ」

 そう言う度に、彼女の顔が悔しげに歪む。

 その歪む顔さえ、幸せの代償なのだ。

 テルに、遠慮などあるはずがない。

 どれだけ、オリフレアが心の中で混乱の収拾がつけられずにいたとしても、後は自分で納得するしかない。

 新しい柱など立てるのはやめて、空を見上げればいいのだと。

 その答えに、一人でたどり着くまで。

 空は青く、太陽は輝いている。

 それだけ知っていれば、イデアメリトスは生きていけるのだから。

 そして。

 テルは、見た。

 彼は、悔し涙を目じりに溜めて眠るオリフレアの、伸びきっていない髪を、ぐしゃぐしゃに撫でた。

「何するのよ!」

 驚いて飛び起きる、彼女の頭に手を回し。

「1回だけ、言ってやる」

 自分の方へ、頭を引き寄せる。

 お互いの額をつっくけるようにして。

 テルは。

 言った。

「オリフレアリックシズ…愛してるぞ」

 そして。

 テルは。

 彼女のベッドを出た。

 オリフレアのおなかが──ぴかぴかしていた。
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