アリスズc
∴
 たくさんの屍を乗り越えて、ハレは『そこ』へ向かおうとしていた。

 前を歩くのはトー。

 横を歩くのはコー。

 もはや、敵はほぼ壊滅状態で、兵士たちが残党狩りをしている。

 テルが派手に燃やしたらしく、あちこちの火はまだ消えきれておらず、熱といやな匂いに包まれていた。

 トーの行き先は、洞窟だった。

 火口の壁に、横穴が開いているのだ。

 その洞窟の入口には、本当に多くの人間が倒れていた。

 必死で守ろうとしたのだろう。

 入口で、コーが音を落とす。

 中に、人がいるかどうか確認したのだろう。

「何人か…いるみたい」

 その言葉に、ハレは髪を両手に巻いた。

 洞窟へ歩み入る。

 さっきまでの壮絶な景色が嘘のように、中は冷ややかだった。

 自分自身の持つ強い光は、暗がりでは良い灯りとなる。

 わざわざ火をともす必要はない。

 そんな洞窟を、慎重に歩く。

 ゆるやかな曲線を描く道筋の奥に、その光はあった。

 遠くからでも、はっきりと分かる光が中央に座っている。

 知っている光だった。

「やっと来たな、ハレ」

 テルだ。

 自分の光と、とてもよく似ているそれは、兄弟の証。

 少し高くなっているところがあるようで、腰掛けて自分たちを待っていたのか。

「『場』とやらを探していたんだが、ここで行き止まりだ」

 テルの両側に、男が二人。

 ビッテとリリューだ。

「トーなら知ってるんだろう? どこに『場』とやらがあるか」

 事情を知る者に、ハレは声を投げる。

 トーは。

 簡潔に、こう言った。

「尻の下だ」

 テルが座っている場所の、下だと。

「おっと、それは失礼したな」

 全く悪びれもせず、弟はそこから立ち上がったのだった。
< 523 / 580 >

この作品をシェア

pagetop