ナンセンス!
やがて、一台のセダンがやって来て、マンションの下の路肩に止まった。
バンパーがヘコんだ、かなり古い車だ。 おそらく、下取り価格は無いと思われる。 廃車手続きをするので、手数料をください、という感じのゴキゲンな車だ。
車を観察していたサブが言った。
「 ・・来ましたよ、会頭! 矢島です! 」
セダンの後部座席から降りて来た男は、黒いズボンにグレーのパーカーを着て、黒のニット帽を被っていた。 髪は金髪。 後ろ髪が、異様に長い。 ・・・お前、それ、カッコいいと思ってんのか? 首からは、ジャラジャラと十字架やピースマークのアクセサリーをぶら下げている。
・・・センス、悪。
他にもう一人、後部座席から男が出て来たが、矢島は手をかざし、車に戻した。 これから、カノ女と、しっぽりする気なんだろう。 一人で行きたい気持ちは、よく分かる。 その男心を読み、クーデター発起を画策するとこなんざ・・・ 策略では、眉毛無したちの勝ちだ。

矢島が、マンションの中に入った。
それを見定めてか、あちこちの物陰や建物の影から、常盤の連中が飛び出して来る・・・! 一体、ドコにこんなに隠れていたのか、と思うほどの人数だ。 全員、一斉にセダンの車を囲んだ。 マサが言った駐車場の黒いミニバンからも、バラバラと出て来る。
囲まれた車の中から運転者と先ほどの男・・ あと、助手席に乗っていた男も車外に
引っ張り出され、乱闘が始まった。
「 ・・・あんな大勢で、乱闘始めやがって・・・! すぐ、警察が来るぞ。 バカ共が! 」
マサが言った。
・・・ねえ、僕ら・・ いつ行く? マサ君や。
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