ナンセンス!
初体験、再び・・・!

1

夕食。
いつもの通り、母と食べる。
「 みちる、ちょいと相談があってね・・・ 」
何だ? ヒンズー・スクワットが100回、出来なくなったのか?
「 実は来週、再婚する事になってね 」
僕は、お吸い物をブーッと吹き出した。
それって、相談じゃないだろッ? しかも、来週って・・・! 旅行に行くような、軽~い口調で言うんじゃねえよ、アンタ。
「 え、えらい急な話しじゃない? 誰よ、相手は 」
「 道場の、塚原さん 」
・・・あの、ヒゲ親父か。
いい人だが、ヤツは来年、還暦だぞ?
59歳で、腹筋が6つに割れてるヤツだから、おかしな趣味を持ってる男だとは思えんが、そんな脳みそ筋肉男がウチに来たら、それこそ毎日、稽古になるんじゃないのか?
僕はイヤだからな? 稽古台になるのは。
はあ~っはっはっは、みちるクン。 いっちょ、モンでやるか? などと、ほざきながら、空手とは関係無い、ニー・ドロップとか、寄り倒しとか、腕四方十字固めとかをやるに決まってる。
しかも格闘家なのに、詩吟を、たしなんでやがる。 ただでさえ、掛け声で、ご近所が怯えていらっしゃるのに、この上、ダミ声で、初春の句なんぞ読まれたら、たまったモンじゃない。
母は言った。
「 式は、日曜日。 そこの婦人会館で、十時からね。 旅行は、行かないから心配しないで 」
なっ・・ おいっ! もう、ソコまで、決まってんのかよ! ドコが、相談なんだ、アンタ。 業務連絡のように、淡々と伝えてんじゃねえよ! ・・・保険殺人の、偽装結婚じゃないだろうな? ま、殺害( 撲殺 )されるのは、アッチだと思うが・・・
もういい。 好きにしてくれ。 僕、疲れたから寝るわ。
部屋に戻る僕に、母は言った。
「 再婚したら、夜、あたしたちの部屋に入る時は、ノックしてね・・・! 」
・・・死んでも、のぞかないから、安心しろ。
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