鬼守の巫女

「凪様……とりあえず部屋に戻りましょう」

木住野さんは私の顔を覗きこむと、俯いたまま唇を噛み締める私の肩にそっと手を触れた。

「……貴方達は平気なの?……火伏さんがこのままでも」

俯いたまま小さく呟くと、眞水さんと木住野さんは切なそうに瞳を揺らした。

「俺達に選ぶ権利などない。生まれたその時から俺達の運命は決められている。それに逆らい、足掻こうとする奴は俺達一族の中には居ない」

眞水さんはそれだけ言うとクルッと背を向け、屋敷へと向かって歩いて行く。

「……あの馬鹿以外にはな」

彼は小さくそう付け足すと、そのまま歩いて行ってしまった。
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