鬼守の巫女

「さて……何から話そうか」

父はそう言うと、小さく息を吐いて、遠い昔を思い出す様にそっと目を閉じる。

「俺は父の事を覚えていません。物心がつく前に、父はすでに……いませんでした」

「そうだね……君が一歳になる前に、烈様は亡くなっていたからな」

父のその言葉に、胸がズキリと痛む。

火伏さんのお父さん……前火伏家当主は、私を連れて逃げる父に手を貸し、一族の裏切り者になった。

そして全ての罪を背負い……自害した。
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