鬼守の巫女

「……失礼致します。昇馬様が御到着致しました」

「今行きます」

廊下から襖越しに男の声が聞こえ、それに馨さんは短く答えると静かに立ち上がる。

「馨さん!!」

その私に叫びを無視して彼女は襖を開くと、そっと私を振り返った。

「夜になれば儀式の準備も整いましょう。その時に……全て分かる事です」

馨さんはそう言ってクスリと妖艶な笑みを浮かべると、そのまま部屋から出て行ってしまった。

彼女の離れて行く足音を聞きながら、茫然とその場に立ち尽くす。

一人残された部屋で、何かを抑える様に強く胸元を押さえた。
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