鬼守の巫女
「……ぎ……かい?」
そう小さく声を漏らし、動かない目の前の男を見つめる。
「違うな。これはあの鬼では無い」
朧源のその言葉に、大きく目を見開いたまま彼を見つめる。
「これはあの鬼と対なす鬼……魏罫(ギケイ)。この鬼こそが……結界の源」
「……ぎ……けい?」
その震える私の問いに朧源は小さく頷いて答える。
「初代の巫女と恋に落ち、自らを結界に捧げた哀れな鬼だ」
朧源はそう言うと、静かにその鬼へと近付いて行く。