Four Cherry
出逢、再会

私の小さなころの、小さな記憶―――



「翼クン!!」

「あ、蒼伊チャンてば遅いッ!」

「ごめん・・でもあのね・・蒼伊・・蒼伊・・お引越しするんだ」

「え?」


そういって私は彼の元から去った。

はっきりとは覚えてない、昔の記憶。

覚えてるのは・・・坂城 翼(サカイ ツバサ)クンっていう幼馴染の名前と、コスモス畑。

秋の夕暮れ、私達を守るように囲むコスモス・・それだけ。

そして1つの真実。

私・・加藤 蒼伊(カトウ アオイ)はあの頃、翼クンが好きだったってコト。




あの日からもう、14年も経ったんだね。

もう私は高校2年生になる。今は春休み。

その春休みに、私に転機がやってきた。




「蒼伊、潤也、お前達をアメリカに連れて行く。」


お父さんの言葉、キチンとした日本語で話されているのに・・理解できない・・!?


「な・・ッ・・なにお父さん。イキナリ・・・。」

「そうよアナタ。もっとしっかり説明してやらないと。」


夕食を終えて全員がリビングに集まる。


「う・・そうだな・・・。実はな・・・父さんの転勤が決まったんだ。」

「て・・・転勤だって!?」


私の兄、加藤 潤也(カトウ ジュンヤ)が目を見開いて父に問いかける。

だけど父の表情は変わらぬまま。


「お父さん、向こうで大きな仕事を任されたらしいわ。だからみーんなで、行きましょう?」


お母さんは外国語の本を片手にもう海外旅行気分。

転勤に・・引越しなんて・・・突然すぎるよぉー・・・。


「俺はあと1年で高校卒業出来るんだよ。日本の高校を卒業したい。」

「蒼伊もッ・・!!」


潤兄チャンの意見に賛同するように父に迫る私達。

そしてとっさに出た・・・小さい頃からの癖。自分のことを、「蒼伊」って呼ぶ癖。

もう17になるってのに・・・いまだに直らないまま・・・・。


「しかも蒼伊は英語が大の苦手だろ?高卒までは日本に居たい・・・。」

「じゅ・・潤兄チャン・・!!!」


からかうように・・いや完全にからかい口調で言う兄。

そして横目で私を見て・・口角を上げる。


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