誘拐 ―おまえに決めた―

思わず目を見開く。


目の前には壁が広がり、自分が犯人側を向いて寝ていなかった幸運に胸をなでおろす。




そうだ。

あのとき。

大柄な男が近づいて、そして……。



何か布のようなものを口に押し当てられて、私は気を失ったんだ。


床が揺れていると感じたのは、トラックの荷台だからか。





「どこかに連れて行かれるんだ……」



本能が激しい危険信号を出す。


情報が欲しい。もっと。

今、何が私に起きているのか。



背中側から聞こえる声に耳を澄ました。

< 12 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop