誘拐 ―おまえに決めた―
「でも、それには時間がかかると思う。それに、昔のこともよく覚えていないみたいだし。俺のことを含めて」
「それは確かにそうだけど」
「だから、この先ずっと一緒にいてください」
「えっ」
「ちなみに、マイが子供の頃俺に行った『わたしをお嫁さんにして』の答えは『YES』です!!」
「だから、覚えてないっつーの!」
嘘。ほんとは覚えてる。
ずっと感じてた。
違和感。
でもそれは悪くない違和感。
はっきりとは思いだせないけれど、リクのことを私はずっと知っていた気がしていた。
両親の事故とか嫌な思い出が一緒に出てきてしまうから、あえて封印しようとしていただけで。
リクが触れる手、そしてふと見せる表情に懐かしさを感じていた。