誘拐 ―おまえに決めた―
「やめとけ」
リクがトイチの腕を、生物として曲がってはいけない方向に曲げようとしている。
「イテテ……。分かったよ。馬鹿力やろうが」
トイチが腕をさすりながら、こズルイ表情でいやらしく言う。
「でもな、お嬢様。
おまえの親とは連絡がとれない。
薄情なもんだな。
残念だが、おまえ大事にされてねーよ」
ニヤニヤと笑いながら、トイチは私を見る。
「別に。分かってた」
これは本音。