誘拐 ―おまえに決めた―

独りになる。



キャミソール一枚で、床に座り込む。


体育座りで、流れる涙を見られないよう膝に顔をつける。


まるで胎児のように丸まって、何かから自分を守りたいと思う。




おかしい。

私は今、誘拐されている。


命の危険に曝されている、間違いなく。



なのに、私の心を深く傷つけるのはそのことではない。


私に最大の恐怖を与えるのは、未だにお父様である事実に愕然とする。

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