S的？遊園地
（でも、あの口の悪さでウェイターが出来るのかな？）

営業が始まると、私のそんな思いが裏切られた。
言葉使いも笑顔も完璧。
その立ち振る舞いに、見惚れている女性客も見受けられた。
私も、ファミレスでのバイト経験を活かして、問題無く接客出来ていると思うのだが、平畠さんはまるでウェイターが本職の様に板についている。

（そう言えば、昨日松本さんが『仕事は真面目で紳士的だ』って言ってたな…。）

私は、松本さんの言葉の意味が少し分かった気がした。

「接客、凄いですね。」

キッチンに食器を下げていると、平畠さんが前を通ったので思わず声を掛けていた。

「当たり前だろうが。じゃなきゃ、レストランを手伝えるか。」

いつも通りの悪態にムッとして言い返そうとしたが、出来上がった料理を持った平畠さんは、素早い身のこなしでホールへ出て行ってしまった。

「お待たせ致しました。ハンバーグセットで御座います。」

遠くに聞こえる澄んだ低めの声が聞こえる。
微笑みながら料理をテーブルに置く姿は、さっき私に悪態をついた人と同一人物とはとても思えなかった。



< 22 / 61 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop