S的?遊園地
そんな平畠さんの姿になぜか無性に腹が立ち、私も負けじと笑顔で接客をする。

「少々お待ち下さいませ。」

そう言ってキッチンに引っ込むと、田中さんから声を掛けられた。

「安浦さん、さすが経験者。すごく戦力になってるよ。」

ストレートに褒められて、何だか照れてしまう。
私は照れ隠しでホールに目線を移した。
そこには、相変わらず機敏に動く平畠さんの姿があった。

「平畠は、たまに手伝ってもらうんだけど、仕事も気配りも完璧。接客中は笑顔を崩さないしね。」

私の視線に気付いたのか、田中さんは平畠さんの話しを始めた。

「ずっとレストランに入ってもらっても良いんだけど、アトラクションの方が良いって言われてね。」

田中さんは残念そうに肩をすくめた。
確かに平畠さんは、少しも立ち止まる事はなく仕事をこなしている。
色々な人の話しから、仕事に真面目なのは良く分かって来た。
しかし、あの口の悪さは遠慮してもらいたいものだ。

「じゃあ、安浦さん。このオニオンスープ、5番テーブルさんにお願いね。」

田中さんの手にはいつの間にかスープ皿が握られていた。

「は、はい!」

私はスープを受け取ると、急いでホールに出て行った。
平畠さんを見ると、お冷やを注いで回っている。

(確かに、気配りも完璧…ね。)

昨日までの平畠さんとの余りのギャップに、驚きを通り越して尊敬さえ覚えた。
私は、平畠さんを横目に見ながらソファー席を抜け、通路を曲がった。
と、そこで足が椅子に引っかかる。

(ヤバい!倒れる。)

私は、バランスを崩し、目の前のテーブルめがけて倒れ込んでいった。

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