たぁ坊とるぅ *32page*
そっと泥棒みたいに盗み見る。
見えたのは、落ち掛けた夕陽が照らして黒くシルエットになっている2人の姿だった。
髪の毛が長くて綺麗で、顔もちっちゃくって、脚が細くて長い女の子。
身長も、アイツの肩くらいまであって……
なんだろ。
流れる2人の沈黙の間に、入ってくどころか、息をすることさえ苦しかった。
ーー‥沈黙を破ったのは、女の子。
「……好き?」
何が?何を?何が?何?
私の頭は、軽くパニック状態になる。
「あぁ‥好きだ」
ーーーー‥っ、
いきなり、涙が私の瞳を支配した。
アイツ、私にはそんな言葉、言ったことないのに‥っ
あの女の子にはそれを言った。
これはどう見たって告白の場面でしょ!?
“私を好き?”
に対しての
“好きだ”
私、間違ってないよね?
「たぁ坊っ」
告白が成功した女の子は、アイツに抱きついたんだ。きっと。
そしてそれを抱きしめ返すアイツ。
そんな光景が予測できる教室内なんて、見ることができなかった。
溢れる涙をなんとか拭って、私は全速力で走り出す。
胸が‥潰れてしまいそうに苦しかった。
……今、気づいたんだ。
私、アイツのことが
ーーーー‥好き。