たぁ坊とるぅ *32page*
「私‥好きだった」
「何、その過去形」
次の日の2限目。
先生がお休みで自習だったのを良いことに、みんなはザワザワと楽しそうにお話してる。
私たちもそう。
……決して楽しい話でさないけど。
「私の大事なるぅを泣かせるなんて、最低だねっアイツは」
「うぅ‥」
油断すれば、また涙が瞳に膜を張って景色を滲ませる。
「ほらー泣かないのっ」
「ランちゃぁんっ」
私の顔を私のタオルハンカチでぐしぐしと拭き続けるランちゃんまでも、
今にも泣いてしまいそうなくらいに、瞳をキラキラと揺らしていた。
「でもるぅ」
「う?」
「それ、ちゃんと聞いた方が良いと思うよ?」
「え‥」
「たぁ坊にさっ」
私の頬をペチペチと優しく叩いたランちゃんは、ふわりと笑っていた。
「アイツが簡単にるぅを裏切るとは思えないんだよね」
ランちゃんの手は冷たい。
私の熱を持った頬を、静かに冷やしていく。
「次、2限続けて選択授業だし、私も一緒に居るから聞いてみな?」
「選択授業‥」
私とアイツが唯一、
一緒になる授業。
なんでこんな時に限って……
「う‥休みたい」
「ダメ」
「具合悪い」
「悪くない」
「イっタ‥」
デコピンされたおでこを擦りながら、ランちゃんを睨んでみる。
そしたら鋭く睨み返されて、あえなく撃沈。
「ま、そんなまぶたが腫れた顔じゃ、嫌われちゃうかもね」
「え゛っ」
「あはは嘘だって♪アイツは顔で選ぶような奴じゃないでしょ?」
そこ‥なんか傷つくんですけど。
「可愛くしたげるから、目つむって」
私は大人しく、ランちゃんの言う通りにした。
心の中はぐちゃぐちゃで、今はアイツに会いたくない。
でも、時間は無情に過ぎていって。
時間割に従わなければならない、学生という立場にさえ、怒りを覚えた。