たぁ坊とるぅ *32page*
「わ、たぁ坊じゃん。相変わらずデカいねえ」
「おー」
背後に感じるアイツの気配。
私は、振り向くことが出来なかった。
「コイツに話があんだけど」
「‥っ、!!」
来た!と思った。
やっぱりそうなんだ。
想像は確信に変わる。
「あー‥」
私を覗き見たランちゃんは、私の顔を自分の肩に押し付けて、頭をポンポンと叩いた。
「この子は今、私とお話中なの。また次の休み時間にしてくれる?もう、始業も鳴るし」
ね?と促すランちゃんに対しての、アイツの間が怖かった。
心臓が恐ろしいくらいに縮こまり、ギューッと苦しい。
油断すれば声を出してしまいそうな込み上げるものを、下唇を噛むことでこらえる。
「……分かった」
泣いちゃダメ。
泣いちゃダメ。
そう言い聞かせて、私は自分の席についた。
この時ばかりは、自分の身長が小さくて良かったと思う。
だって、プリント配りで振り向かない限り、アイツの方を見なくて済むもん。
見なくて、済むもん‥。