たぁ坊とるぅ *32page*
3限目の終業ベル。
鳴って、先生が休み時間を宣告した瞬間に私はトイレへと走った。
トイレまではアイツも入ってこれない。
だから、10分の時間をここで過ごそうと思った。
なのにーー‥
バンッ
「おい」
鏡の前にいた5、6人の女の子たちがキャーキャー悲鳴をあげる。
「わ、たぁ坊!!あんた変態かっ」
さすがのランちゃんも少しだけ慌てた様子だった。
「来い」
声が、出なかった。
今までにないくらい真剣で、真っ直ぐな瞳。
それは、私を鋭く貫く。
「‥っ、」
今にも潰れそうな胸を両方のグーで抑えて、私はその場に立ちすくんでた。
足が前に出ない。
声すらまともに出ない。
「るぅ、行っといで」
ランちゃんの方を見ると、ランちゃんは私のおでこに自分のおでこをゴツンと合わせて
「大丈夫」
って優しく笑った。
私はそれに黙って頷くと、またアイツを見る。
アイツは、女子トイレの鴨居をくぐった所で止まってた。
私が進む意思を見せると、まるでついて来いと言わんばかりに背中を向けて歩いてく。
スカートの裾がヒラヒラ、ヒラヒラ。
私は、それをずっと見ながら、ついて行った。