♂GAME♀
『はい。 お疲れ様』

仕事を終えてお給料をもらう。
この瞬間だけは、何度迎えても感動するなぁ。

登録制のバイトだから仕事ない日も多いけど、
「私、働いてる~」って気がするもん。

お財布の中身も増えてきたし!

ま、そろそろ「あの借金」も返してもいいかな。




今日のお給料から切符を買って家に向かう。

着いたのは10時を過ぎた頃だった。

自分の部屋に入るより先に、押し馴れない隣の部屋のインターホンを押して扉に寄り掛かった。

『いないのかよ……』

しばらくしても出てこない住人に少し腹を立てて、扉をノックした。

『……水の音?』

微かに聞こえる水の音。
止まる事なく継続して聞こえるよ。


……まさか、お風呂で何かあったんじゃ……

倒れてるとか?

いや、歯磨きしてるだけかも。
ご飯作ってるとか?

『輝~? 起きてるの?』

声を掛けながらドアノブを回すと……回る。

『入るからね!』

よく考えたら輝だって無断で私ん家入ってくるし、
何で私が遠慮しなきゃなんないんだよ!

『輝ぅ? 輝くーん……』

でも何となく悪い事してるような気がして、忍び足になっちゃう。

私だって無断侵入されてるのにぃ!

『輝? お風呂なの?』

どうやら水音は脱衣所の方から聞こえてるみたい。

勝手に入っちゃったけど、シャワーでも浴びてるならヤバかったかな。


『綾香……?』
『ぅぁッ はい!?』

突然呼ばれたのに驚いて、思わずシャキンと気をつけの姿勢に……

『悪いんだけど…… 部屋から薬箱持ってきて』

薬箱?

『体調悪いの?』
『んー……ちょっと』

姿は見えないけど、確かに声に元気が無い。
風邪……かな?

『待ってて。 すぐ取ってくる』

そう言って部屋に引き返そうとした瞬間だった。
ガタンと、何かが崩れる音が脱衣所から。

『ちょッ 輝!?』

重症なのか、倒れて脱衣所からはみ出した輝の顔は、青白く血の気がない。

ってか、倒れたんですけど!!

『きゅ、救急車!』

えっと、救急車は何番だっけ!
110、111、112……
あ、頭がパニクってる!!
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