♂GAME♀
『救急車、救急車ッ!!』

119番を押そうと携帯のボタンを押すけど、震えが邪魔して余計なボタンまで押してしまう。

早く呼ばなきゃ。
助けなきゃ、って思うのに……!

『いーよ……意識ある』

と、動揺する私をなだめるように輝が口を開いた。

『朝から熱っぽいなって思ってたんだけど…… 指名あったから』
『ばッ 馬鹿!! 何で断らないの!?』

会社員でもないんだから、指名なんて断っちゃえばいいんだ。
自分の身体が一番大事なのに……

『一ヶ月も前からの予約だし、新規だったから』

ほんっとに馬鹿。

『代役が頼めないのが、デリホスの欠点だよな』

なんて笑うから、文句も言えなくなってしまう。

『もういいから…… ベッドまで行ける?』
『少しずつ這って行くよ。 ここ冷たいから』

体調悪いくせに強がって、冗談なんか言って……

私、このまま帰ったら人で無しみたいじゃん。

『肩……貸すから、行くよ』

寒さに震える手を取ると、震えとは裏腹に熱かった。
きっと熱が高いんだろう。

目も潤んで頬は赤くて、
ほてった体から甘いコロンの香りがして、

胸元も開いちゃってるし。

ヤバイヤバイ。
あんた、色気ありすぎですから……ッ

って、エロオヤジかよ!
真面目に看病しようよ、マジで!

こんな緊急事態に、不謹慎な事を思う自分に反省しながら、ようやく輝をベッドに寝かす事が出来た。

汗もすごくかいてるし、体がすごく熱い。

『氷枕を用意して、着替えさせて…… それから、えっとー……』

本当は病院に行かせたいんだけど、車もないし免許もない。
いつも運転手になってくれる輝は、こんなんだし。

明日まで様子を見て、駄目だと思った時に救急車を呼ぼう。

うん、それまでは自分の出来る事を頑張ってみせる!
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