♂GAME♀

『あんた、自分のした事の重大さを解ってんの!?』

勝ち誇ったような笑みを浮かべる智志に、苛立ちが募る。

いくら私達が酷い事をしたからって、輝の過去を引き合いに出すなんて間違ってる。

『それに、何でそんなに私に構うのよ!』

大して愛してなかっただろうし。
簡単に捨てていった。

私を大切に思ってたなら、あの時に輝と張り合えばよかったんだ。

こんなやり方をしなくたって、よかったはずだ。


『自惚れんなよ。 俺は別に、綾香に未練があるわけじゃない』
『……え?』

思わずマヌケな声を出してしまった私に、クックッと笑う智志。

『あいつがムカつくんだよ』

あいつって、輝の事……?

『ただ顔がいいだけの能無しのくせに、俺に勝ったつもりでいる』

何言ってんの?
何か……いつもと感じが違う。

『オマケに社長の息子とはな…… つくづくカンに障る野郎だよ』

グッと腕を掴まれ、冷や汗が出る。

何てプライドが高いんだろう。
そんな事で、皆の努力を無駄にしたって言うの?

そんなの許せないッ!

『輝は勝ってるよ。 顔だけじゃなく、優しさとか強さとか、智志よりずっと!!』

数え切れないくらい、秀(ヒイ)でた所があるよ。

『てめぇ!! 調子乗るのもいい加減に……!』

声を荒げて、拳を振り上げる。

「殴られる」
そう覚悟して目を閉じるが、

次の瞬間、痛みじゃなく、鈍い音と何かが落ちるような音が聞こえた。

『女に殴り掛かってんじゃねーよ』

恐る恐る開けた目に飛び込んできた光景。

それは、
顔を押さえ床で悶絶する智志と、それを上から見下ろす輝の姿だった……
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