♂GAME♀
新幹線で約3時間。
駅を出ると名古屋の街が、私達を出迎えてくれた。
東京では追われてたけど、名古屋は、そんな様子もない。
きっとマスコミは皆、中林社長の所に行ってしまったんだろう。
『すみません。 中林グループの本社に行きたいんですけど』
タクシーをつかまえ、尋ねる。
運転手さんは、輝の顔に一瞬目をしかめたが、すぐに笑顔を作った。
『あそこは今、賑やかですよ』
と、まるで知ったような口ぶり。
やめておいた方がいいって事かな……
『じゃあ付近で降ろしてください。 様子も見たいし』
後部座席に乗り込み、そう答える輝。
私って勢いでついてきちゃったから、まだビビってる。
輝みたいに度胸もないし。
もしかしたら足手まといかも……
それに、ここまで大事になったのも私のせいだ。
私が智志を裏切ったから……
『あの、さ…… ごめんね?』
何だかいたたまれない気持ちになってしまい、輝に謝ってみた。
『何が? 何かしたの?』
クスクスと小さな笑い声が、余計に苦になるよ……
『ほら、こんな騒ぎにしたのも智志でしょ?』
『はは、そうかも』
『私と出会ってからの輝って散々だなぁって……』
こんな有名人になっちゃったら、多分もうデリホスには戻れないし。
日本中の人から後ろ指差されるかも。
『何を馬鹿な事言ってんだよ』
と、俯く私に輝は意地悪な笑みを向けた。
『人並みに恋愛も出来てるし、自分の過去もわかったし。 いい事ばっかりだよ』
『……馬鹿』
気を使ってるのバレバレなんだから……
『それに俺みたいな臆病者は、いきなり全国ネットで知った方がいいんだよ。 どうせ自分じゃ調べられないんだからさぁ』
でも、少し気が楽になったよ。
『嘘つき…… でも、ありがとね?』