♂GAME♀
『お客さん、これ以上は無理ですねぇ』
運転手さんは、そう言って私達を本社から100m離れたコンビニの駐車場に下ろしてくれた。
ここからでも凄い数の報道陣がいるのが見える。
輝の存在に気付けば、すぐにでも向かってくるだろう。
……恐い……
『あーやかっ!』
と、突然抱きしめられ、心臓がビクッと跳ねた。
『何すんのよ!?』
『あはっ、緊張を解そうと』
馬鹿。
心臓麻痺するかと思ったし。
『これあげるから大丈夫! ね?』
そう言って私の頭に被せてきた帽子。
それは、輝が東京からずっと目深(マブカ)に被ってきた帽子で……
『ほら、眼鏡もサービスしちゃうよ』
そして、それはずっと外さなったダテ眼鏡。
自分の正体がバレないようにと……
『そんなん、すぐ見つかっちゃうよ』
あんなにも輝を追ってる人がいるのに。
『いいんだよ、別に』
『……え?』
『父親に会うのにコソコソしなきゃ会えないなんて、可笑しいだろ?』
そうだけど、
そうなんだけど……
『写真だって撮られたっていいよ。 すでにホストん時の写真がテレビで出されてるし。 でも、綾香は駄目だ』
『……はい?』
『綾香の事だけは撮らせない』
輝はそう言って、ニッと笑った。
そして……
『さ、とっとと終わらせてこようぜ』
無数のカメラのフラッシュで明るくなった場所へと、歩を進めていった……