♂GAME♀
レンタカーを帰し、新幹線に乗って、行きと逆さまの景色を眺める。
都会が田舎に変わり、田舎からまた都会になる。
行きよりも、早く通り過ぎる気がした。
『本当は遊園地にも行きたかったんだけど、ごめんね』
横浜を過ぎた頃、輝が申し訳なさそう言った。
もしかして……
『この後、指名入ってる?』
それで、こんな早い時間の新幹線に乗ったのかな?
『1時からね? 足立の方で』
『……そっか』
何でそんなバツの悪そうに笑うんだろう。
別に気にしてないのに。
輝の仕事に、私が口出す事もないのに……
『あ、もう着くみたい』
『……だな。 俺、荷物持つよ』
新幹線の車内に響くメロディー。
終点の東京駅に着く事を知らせるための物。
ただ、それだけの為に鳴っているのに、今日は私を助けてくれた。
輝との間にあった気まずい張り詰めた空気が、少し緩んだから……
『輝』
東京駅、山手線乗り場。
列車を待っている私達の背後から、聞いた事のない男の声がした。
『偶然だね、輝』
スーツを上手く着崩したファッション。
ブランドを主張したアクセサリー。
この人は……
『咲耶……』
咲耶だ。
『こんにちわ。 輝の彼女?』
頭の先まで舐めるような視線。
小ばかにしたような笑み。
ヤバー……
私の嫌いなタイプだ。
『輝が辞めたのって、コレが原因なんだぁ』
つか、人の事「コレ」って言うな。
指差すなっつーの。
『落ちたねぇ、輝も』
……は?
何こいつ!?