♂GAME♀
咲耶の中の輝と、私の中の輝。
なんだか、違う人のような気がするよ……

『それに、輝は絶対に人を好きにならない』

本当にこれは、輝の話なんだろうか……

『こんな稼げる時期に、特定の人物に惚れるなんて馬鹿な真似。 輝には有り得ないよ』

もしかしたら、違う人の話なんじゃ……

そう思ってしまう程、私の中のイメージと掛け離れていた。

『それに……誰かがゲームに勝つまで、輝は恋愛をしないんじゃないかな?』

意味深な言葉を発し、咲耶は笑顔を見せた。

聞けば聞く程、輝がわからなくなる。
ゲームの意味がわからなくなる。

このゲームを終えた時、私と輝はどう変わるんだろう。

『……輝は、私に「自分の女になれ」って言った。 私達のゲームはそれなの』

輝にとって、このゲームは無意味なもの。
恋愛を避けているはずの輝が、こんなゲームを始めるわけがない。

でも始めたには、絶対にワケがある。

ただ単純に私を手に入れたいだけ?
それとも他に何かある?


『そうか…… まだ輝は、見失ったままなんだね』

と、考えこんでいた私に、咲耶は言った。

『恋愛を避けるために始めたゲーム。 いつまでも見つけられない自分の名前。 輝は何を思ったんだろうね?』

え?
輝が、何を……?

『自分は誰なんだろう。 何物なんだろう。 一体、何処から来たんだろう。』

え? え?
何?
何を言ってるの?

『誰か、自分が何物か調べてくれないだろうか。 そう思っただろうね』

辺りがシンと静まったような気がした。

頭の中で輝の声が、鮮明に浮かぶ。

【俺、小さい頃の記憶薄いし】

馬鹿。
記憶が薄いとか、そんなレベルじゃないじゃん。

輝、あんたもしかして……
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