好きを私にください。
-そうして迎えた引っ越しの日


「明海、そろそろ…。」

「うん。分かってる。」


でもまだ…先生に会えてない。


空っぽの家。

トラックに積まれたダンボール。


引っ越しなのか、と思わせるものだった。


「和樹か…。」

「…。」


メールもした。


『今日、引っ越しなの。』


会いたいとは、なんとなく言えなかった。


『そっか』


どうすればいいのか分からなくて、動けなくて。


行動しなきゃ、何も変わらないことくらい分かってるのに、でもダメで…。


「…明海。」

「…うん。」


行かなきゃ、ダメだよね。


あたしは助手席に乗り込んだ。




さようなら、大好きな場所。

大好きな人。

大好きな日々。



家、道、景色、学校。


そして、塾。



全部全部、さようなら。




そして、ありがとう…。




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